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神戸市が「GovTech」に取り組みはじめた本当の理由| コラム02

神戸市が「GovTech」に取り組みはじめた本当の理由 |  コラム02 アイキャッチ

多名部 重則|神戸市医療・新産業本部新産業創造担当課長

 

 FinTech(金融)やEdTech(教育)といった「x Tech」という言葉の一つに、GovTech(ガブテック)がある。政府(Government)と技術(Technology)を組み合わせたもので、海外では2013年頃から用いられているが、日本ではまだ知られていない。

 こんな中で、神戸市は、GovTech関連カンファレンスとして、国内で過去最大となるイベントを東京の大手町で開催した。なぜ突然、神戸市が「GovTech」に舵を切ったのかを不思議に思っている方は多いだろう。ここでは、その理由を明らかにしたい。

 

 

 

|  すべての始まりは2015年の久元喜造市長の米国出張にあった

 神戸市がスタートアップ関連の施策をスタートさせたのは、今から4年前の2015年4月。その年の6月、久元喜造市長が米国に出張し、シリコンバレーからサンフランシスコを訪問した。そして、シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル(VC)「500 Startups」のオフィスを訪問し、意見交換を行った。これが翌年、「500 KOBE ACCELERATOR」という、シリコンバレーの著名なVCが国内で初めて行うスタートアップの育成プログラムに結実した。

2015年6月「TUMML」を訪問した久元喜造市長 本邦初公開

 実は、このとき訪問したVCは500 Startupsだけではない。日本では無名であるが、社会課題解決型ビジネスを投資対象とする「TUMML(トゥムル)」を訪問した。このVCの共同代表兼創業者はスタンフォードを出た二人の女性だ。彼女たちは「スタンフォードを卒業した人は、社会の役に立っていると思えないデーティングアプリ(人の出会いを作るためのアプリ)の開発に注力すべきでない。むしろ社会課題を解決するビジネスを生み出すべきだ」と熱く語っていた。彼女たちが出資した「通勤需要対応型地域交通サービス」が自動車メーカーのフォード社に買収されたことを例に、社会課題に振ると儲からないと考える人も多いが、実際はそうではないとあっけらかんと話した。

 

 

 このとき、出張に随行していた私は、行政である神戸市がスタートアップ育成をするのであれば、スタートアップのテクノロジーが社会・行政課題を解決するプラットフォームを、エコシステムづくりの中心に据えるのが理想である考えた。しかし、そんな突拍子もない展開ができるわけがなく、単なる妄想に終わった。

 その後、米カリフォルニア州では、2016年からサンフランシスコ市と近隣の3都市が「Startup in Residence(STiR)」というプログラムを始めた。この「Residence」とは「市庁舎」を意味し、文字通り「市役所の中のスタートアップ」という意味合いをもつ。行政業務へのテクノロジー導入が狙いだ。このプログラムは、まず行政側が解決したい課題を提示し、それを解決できるアイデアや技術を持つスタートアップとマッチングを行う。その後、スタートアップが行政の担当者とともに4カ月をかけてプロトタイプを開発し、実証実験で出来具合を評価。最後に両者が実用化にGOサインを出したときは、行政が予算化して本格導入する。

 

 

 この動きを察知した神戸市は、その翌年、「Urban Innovation KOBE」を試行し、2018年本格実施した。「Startup in Residence(STiR)」をモデルとした、国内初の取組みである。

 

 

 

Startup in Residence ウェブサイト

| 難関は行政がスタートアップと馴染めるかにある

 私が3年前に妄想と葬り去った考えを蘇らせたのは、500 Startupsとのパートナー関係となった神戸市が、知名度を上げ、注目を集めることができたことが大きい。そんな神戸市の次なるプロジェクトだからこそ、2018年上期の6つのテーマに60社の応募があったのであろう。

 

 むしろ、このプロジェクト導入の最大の難関は市役所側にある。市職員から見ると、創業間もなく、実績もない、従業員も少ないスタートアップは「あやしい会社」に過ぎない。いかに優れたテクノロジーを持ち、柔軟な対応ができ、さらに大手ベンダーよりはるかに安価で開発ができると言われても、尻込みをする。しかし、スタートアップを取り巻く社会の評価が大きく変化してきた。

 

Urban Innovation KOBEのワークショップの様子

 実は、日本経済新聞ですら、2017年4月以前は「スタートアップ」という言葉を紙面では使っていない。「ベンチャー企業」、「新興企業」と表現されていた。ところが、2017年4月に転機が訪れる。朝刊一面で「スタートアップ 大競争」という特集記事が掲載された。これを機会に、当初は「スタートアップ(創業間もないベンチャー企業)」としながらも、紙面で「スタートアップ」というワードが解禁となる。今では、日本経済新聞の紙面で目にしない日はない。

 

 神戸市のスタートアップの取組みが新聞で何度も取り上げられると、神戸市役所の内部でも「スタートアップ」という言葉が次第に広まった。今月14日に、若手職員と外部から登用された職員の交流会が行われたときに、「Urban Innovation KOBE」の担当者が、若手職員にプログラムを知っているかを聞いたところ、参加した30人全員が手を挙げた。

 

 サンフランシスコ市は「Startup in Residence(STiR)」に取り組むことで、シリコンバレーに近いという地の利を生かし、スタートアップに成長の機会を与えようとしている。まさにスタートアップにフレンドリーという意味でのブランディングを行い、注目を集めようとしているのだ。

 

 日本経済が右肩下がりになる中で神戸市は、人口減少という大きな課題に直面している。そんな中で、成長軌道に乗る可能性があれば、それに掛けることにためらうべきでない。置かれた環境こそ違いはあるが、はるかに見える北極星はサンフランシスコから見えるものと同じものだ。

■関連リンク

TUMML http://www.tumml.org/

Startup on Residence(STiR)https://startupinresidence.org/

 

 

■これまでのコラム

コラム01 | 神戸市が「TechCrunch JAPAN 2018」のスポンサーになった理由

■神戸市のスタートアップ支援プログラムについて 詳しくはこちら

 

■このコラムの著者である多名部重則は、Forbes JAPANでOfficial Columnistとして「地方発イノベーションの秘訣」というテーマで、スタートアップ、アフリカなどについてのコラムを毎月掲載しています。

過去の連載記事は以下をご覧ください。

Forbes JAPANコラム URL https://forbesjapan.com/author/detail/896# 

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