INTERVIEW

既存の営業や広報の先を見据えるふたりのスペシャリスト、着任インタビュー

自治体初の試み!神戸市「チーフ・エバンジェリスト」とは何者か?(前編)

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2019年10月1日付で神戸市は“チーフ・エバンジェリスト”2名の東京での着任を発表。民間企業で長年活躍してきたスペシャリストの2名がこれから3年間、東京・WeWork丸の内北口を拠点として動いていくことになる。IT業界を中心に徐々にその名を聞く機会が増えている ”エバンジェリスト(伝道師)”。

今回は、全国の自治体で初となる「チーフ・エバンジェリスト」に着任したふたりが、自身のこれまでの経験と、ここから何を目指していくかについて意見を交わした。

<プロフィール>

乾 洋 / 前職 オリックス株式会社ORIX Leasing Malaysia Berhad, CEO
ベンチャーキャピタル投資を含む投融資事業、PEファンド組成、証券化、海外現地法人でのCFO、CEO経験を経て現職。海外滞在歴通算17年(アメリカ、シンガポール、フィリピン、マレーシア)。デッドとエクイティの両方に精通し、海外でのマネジメント経験豊富。神戸出身。

栗山 麗子 / 前職 日本製粉株式会社 ヘルスケア事業部 開発チームマネージャー
大学院で応用生命工学専攻。食品メーカーで商品開発、営業企画、マーケティング、事業開発など幅広い分野を経験。現在注目を浴びているアマニ市場確立にゼロから携わり、テレビ通販番組などにも多数出演。元食品業界のエバンジェリスト。

ーー はじめまして、エバンジェリストとして着任されてまだ間も無いおふたりですが、この自治体で初となる肩書きがとても気になるところですね!

栗山さん:そもそも採用時にはエバンジェリストという肩書きでの募集ではなかったので、着任して「あ、そういう肩書きなのですね!」と驚きました(笑)。とはいえ、募集の時点で職務範囲がとても広い点も魅力に感じていたので、すぐに受け入れることができました。

乾さん:私は金融から、栗山さんは食品メーカーというある意味まったくの異業種から、神戸市の“伝道師”になる、と。だからこそ、まだ成り立てではありますがエバンジェリストの役割については非常に考えるところがあります。

IT業界でのエバンジェリストとは、自社・他社製品、そしてテクノロジーのトレンドまですべてを把握した上で、トータルでユーザーに向けて分かりやすく解説、啓蒙する、という役割ですよね。単にある商品を買ってもらうための営業、ということではなく、もっと心の底から人々を動かすのが伝道師=エバンジェリストである、と。

栗山さん:“ただ話ができる人”ではない、聞く人の感情の動き・エモーショナルなものを察知し、それに合わせて話の流れを作り、最終的には聞いている人の心を動かし行動に移させることが出来る人ということですよね。

では神戸市のエバジェリストとしてはどうしていくべきか。

現在は状況把握からスタートし、自分たちのやるべきことを整理している段階ですが、まずは神戸市が行っていることを発信するとともに、神戸そのもののファンを増やすということをやっていきたいと考えています。ヒト・モノ・カネのすべてが東京に一極集中しがちな中で、どうすればその流れを神戸へ向けられるのか。我々がそのきっかけになれればと思っています。非常に重い、でもやりがいのある仕事です

ーー そもそもなぜおふたりはこれまでの経歴から、自治体へ転職をされようと思ったのでしょうか?

乾さん:私もそうでしたが、人間、特に男性は50歳過ぎくらいになると、みんな悩んでいると思います。これからどうしようか、と考えたとき、このまま同じ会社でキャリアを積み上げきる、という道もあると思いますが、私はそれでは面白くないな、と思ったんです

17年ほど海外で仕事をしており、もう海外については十分やったな、と思いました。自分のキャリアを棚卸しながら悩み、他の仕事にも目を向けてみようと考え始めた時に、神戸市の募集が目に留まりました。もともと神戸出身なので、神戸には愛着も縁もあり、実はいずれは神戸に帰って何かしたいなとずっと思っていました。東京で死にたくはない、と。

それなら今が外へ出て新しいことをする最後のチャンスなのではないかと決意しました。ただ、正直に言えば、募集内容を見た時「求められる人物像」に100%自分が合致しているとは思えず、広告代理店などのご経験者かなとも感じてたんです。でも、自分のスキルも活かせるはずだと思い、応募を決断しました。

栗山さん:募集する側の熱意に魅力を感じたのも大きかったですね。それは他の方々も同じだったようで、721名という、転職サイト企業内でも話題になるほど多数の応募があったと聞いています

ーー なるほど。それはどういった文章だったのでしょうか?

栗山さん:市長を筆頭に改革はスタートしているし、ここからさらにみんなで変えていくんだぞ!という気概が感じられる内容で、変えていくための仲間をさらに募りたい、一緒にワクワク仕事しよう!という想いが書かれたものでした。

先ほどお話ししたように、この歳で転職することにはかなりリスクも感じましたが、この呼びかけに、自分の仕事の幅を広げられる魅力、これまで培ってきたことにさらにオンできる魅力を感じたんです。もちろん雇われたからには求められる以上のことをするのがプロとして当然ですが、3年という限られた任期の中で我々自身も得られることがあると思ったからこそ、応募したというのが本当のところかもしれません。

ーー 応募のきっかけも含め、もう少し詳しくご自身のバックグラウンドを伺えればと思います。

栗山さん私は創立123年になる製粉会社で21年間働いてきました。とてもよい会社で離職率が非常に低く、20年も働いて辞める人はほぼいない環境でした。しかも私は女性総合職の2期目で、大きな期待を持って育てていただき、いろいろなポジションも経験させてもらってきたので、これまで辞めることを具体的に考えたことはありませんでした。たまたま今後のキャリアをじっくり考えたいと思った際に、社外も含めより多くの選択肢を見渡してみたい、自分の市場価値を把握したいと考え、気軽な気持ちで転職サイトに登録したというのが応募のきっかけでした。

前職では、新卒で入社してからユーザーサポートの一環として神戸市東灘区の工業団地で業務用ユーザー様向けにレシピや販売方法の提案をさせていただいていました。今回、神戸にご縁を感じたのも実はその経験がすごく大きかったと感じています。

当時私が開発した商品のいくつかは、今も現役でたくさんの方に愛されているのですが、そんな商品については職を離れた今でもついつい周りの人に宣伝してしまいます。でも、伝道師ってそういうことなのかな、とも思います。根底に愛なくしてはできない仕事で、まず大前提として“自分はこれが好きだ!よいと思う!多くの方に知ってもらいたい!”という掛け値なしの想いがあり、それをお伝えするのも伝道師なのかな、と。

そうやって商品開発の現場を5年ほど経験した後、本社の営業企画部署へ移り、新しい商品や展示会の企画を幅広く担当し、その時に現在もライフワークとなっているアマニに出会いました。その後はマーケティング部門の立ち上げも経験し、最後の5年はヘルスケア部門にて大きく成長したアマニ事業に再度取り組みました。

そこでは思いがけずテレビ通販番組にも出演することになったのですが、結果として日本最大の通販番組の健康食品でナンバー1商品を育て上げることに成功しました。アマニ事業については日本国内でほぼ0だったものが100億円市場になるまでを見届けられ、本当に勉強になりました。今振り返ってみると、私はアマニのエバンジェリストだったんだな、と思いますね。それくらい商品を愛して、心血注いでいた感じはあります。

ーー 当時から愛を礎として仕事をされていた、と。

栗山さん:そうですね。よく周りの方々にアマニ愛がすごすぎると言われていました(笑)。今後、神戸市はポートアイランドを中心としてさらなる医療産業の活性化を目指していくので、その面でもこれまでの経験を活かせると思っています。アマニの仕事も根底にあるのは商品への愛だったと思うので、その経験をエバンジェリストとしての仕事にも活かしていきたいと思います。

ーー 非常に貴重な経験をお持ちですね!

栗山さん:本当によい経験をさせてもらいました。前職を引き継ぐにあたり、大ヒット商品となったテレビ通販の後任を探すことは、実は簡単ではありませんでした。如何にして次の人にバトンタッチをするのか、これは今後より深めていきたい課題の1つでもありますが、自分の愛を語って、次の人にその愛を感じてもらい、また別の誰かへ語っていってもらうには?という課題です。同じ商品であっても、どのように語られるかで見え方はガラリと変わりますし、逆に伝え方ひとつで、ファンになって頂ける方が増える可能性もあるので、そのよりよい継承の仕方というのは今後も考えていかないといけないと思っています。

ーー 乾さんはこれまで金融業界でかなりの経験を積まれてこられていますよね。

乾さん:そうですね、私の場合は金融という“目に見えない商品”をずっと扱ってきました。投資、融資、証券化、資金調達などいわゆるファイナンスに関することを専門部署で一通り経験してきましたので、資産・負債・資本から構成されるバランスシートのほぼすべてを実際に扱ったことになります。投資(エクイティ)の分野では海外でのベンチャーキャピタル(VC)投資、数百億円規模の大口投資などです。

オリックス時代の様子

いわゆるVCと呼ばれる人たちの中には元起業家とかエンジニアのバックグラウンドを持っている人が多いという印象ですが、私のように融資(デッド)や証券化商品の組成や販売(アセット)までやったことがある人はかなり珍しい部類に入ると思います。このエクイティ、デッド、アセットの3分野の中で群を抜いて面白いのはエクイティですね。

VC投資では回収不能となった失敗案件も多く経験しました。投資先の経営者やビジネスモデルに愛着を持ってしまうと周りが見えなってしまうんです。これがエクイティの難しさであることを身をもって体験しました。

それから海外でCFO、CEOや社外取締役といった立場を歴任させてもらったことも大きな財産になっています。特にCEOという仕事は社員の家族の生活を含めてバランスシートを背負う仕事なのでプレッシャーは半端なかったです。こうやってマネジメントを含めていろいろと痺れる経験を前の会社で積ませてもらったわけですが、もう一度やってみたいと思ったのは、VCやスタートアップに関わる仕事です。例えば数百億円の大口プロジェクト投資案件は実行したら日経新聞にも掲載されて大きな達成感を得られますが、大企業対大企業というケースが多いです。

一方で人生を賭けてビジネスモデルやテクノロジーを売り込む起業家は熱量が違います。自分のキャリアを棚卸する中で、大きなお金を動かすより、スタートアップに関わりたいと思うようになりました神戸ではスタートアップを支援をどんどん進めていますので、そこにファイナンスのスペシャリストとして、スタートアップエコシステムの形成に役立てるのではないか、という気持ちを強く持っています。海外、経営ととファイナンスという視点から、スタートアップはもちろん、大企業の方々とも関わり合いたいですね。

 

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次回、二人のエバンジェリストがいよいよ始動!
WeWorkを拠点とした活動内容に言及した「後編はこちら→」

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